原油価格の乱高下と中露の外交主導がBRICSの政治経済を揺るがす
原油市場の変動と中露の外交動向が、この24時間でBRICS各国の政治・経済に同時多発的な影響を与えた。ロシアのブレントは約15%下落して92ドルを下回り、モスクワ証券取引所で石油関連株が売られた一方で、期間内に国際原油が100ドルを超える局面もあり、エネルギーコストの振幅が各国の企業収益と国庫収支を直撃した。
同時にロシアと中国が国連での外交主導を強め、イラン情勢を巡る共同案を提出したことや、中東での地域紛争がブラジルの対中東輸出を大きく削り、南アフリカの通貨がリスクオンで急騰するなど、地政学と商品市況の交錯がBRICS圏内の政策選択と市場反応を複雑化させた。
ブラジル
ブラジルでは貿易面での逆風と農業被害が同時に圧迫している。連邦政府は2026年の貿易黒字を約721億ドルと見込む一方、直近の3月の貿易収支は2020年以来最小の黒字を記録した。地域紛争の影響で中東向け輸出は開始以来26%減少し、トウモロコシに対する破壊的害虫による被害は年間約336億レアルに上ると推計される。Fundo Garantidor de CréditosはWill Bankの預金者と債権者に約60億レアルを支払った。政府は家計の債務返済支援のためFGTS残高活用を検討中で、議会はSeguro Defesoの保護を一時的に修正し、労働省は奴隷的労働違反で169の雇用主を「lista suja」に追加した。
ロシア
ロシアでは外交と国内安全、エネルギー市場の波及が表裏一体となっている。モスクワは国連での外交主導を強調し、中国と共にイラン情勢に関する共同案を安全保障理事会に提出した。外務省は一部艦船を「シャドウフリート」と分類する動きに対して国際法違反だと公然と反対した。国内ではダゲスタンが非常事態を宣言し、ベルゴロド州で過去24時間に130回超のドローン攻撃があった。4月8日にブレントが約15%下落して92ドルを下回ったことが石油銘柄の下落につながった。中央銀行は4月8日の対ドルレートを1ドル=78.75ルーブルに設定し、人民元売却相当の約1億1,720万ドルの取引を決済日4月7日で公表した。2025年のインターネット経済は約3,820億ドルと推計され、ロシア鉄道のコンテナ輸送は2026年第1四半期に2%減少した。ウストルーガ港の第2工区の工事が完了したと報告された。
インド
インドでは成長期待とインフラ投資の進展が並走する一方、燃料コスト上昇が企業と国有事業者の収益を圧迫している。State Bank of IndiaはFY26第3四半期のGDP成長率が8%超となる可能性を示し、中央銀行はFY26の成長を7.6%と見積もった。HSBCのサービス業PMIは3月に57.5へ低下したが依然として拡大を示す。RBIはFY27初の金融政策会合でレポ金利を5.25%に据え置いた。国際原油が一時100ドルを上回ったため、下流の燃料利ざやは圧迫され、輸入価格上昇を吸収した国有燃料販売者は損失を計上した。主要港湾は2025/26年度に過去最高の9.15億トンを取り扱った。政府はアルナーチャル・プラデーシュのKarai II水力事業を約1,410億ルピー、ジャイプール地下鉄延伸を約1,304億ルピーで承認し、防衛輸出は62.66%増の約3,842億ルピーで過去最高を記録した。
中国
中国では企業負担軽減や国有資産、データ統治の強化が進む。企業の負担軽減、市場参入障壁の除去、国有企業改革や先端製造クラスターの推進策が追加され、海外国有資産を集中管理する新たな局も設置された。人民元は1ドル=6.8680元で推移した。規制当局はデータガバナンスと相互運用性を整えるため22の国家データ標準案を公表し、排出量の追跡精度向上のため大規模排出量会計モデルが導入された。宇宙・通信面では長征8号ロケットが新たなインターネット衛星を打ち上げた。軍の訓練における政治的是正の深化を習近平が強調し、王毅外相は北朝鮮訪問を計画、4月1〜7日にはウルムチでアフガニスタン・パキスタンとの3国会合を主催した。
南アフリカ
南アフリカではリスクセンチメントの改善が通貨高と公共投資拡大を促したが、社会的課題は依然として深刻である。米米・イラン停戦報道を受けてランドは2%超上昇した。政府は公共投資を拡大すると約束し、ムプマランガ州の道路事業に220億ランド超を配分した。社会保障給付を巡る長蛇の列と高いエネルギー費用が続き、パラフィン支援や的確な支援を求める声が上がっている。憲法裁判所はEFFのFara‑Fara事件について1か月以内の判決が見込まれる。野党ActionSAは大臣の業績契約公開とトラシェ大臣の解任を求め、贈答品未申告を巡る告発を提起した。ケープフラッツへの国防軍投入の効果は疑問視されており、ビートブリッジ国境検問所では未成年者の拘束が増加したと報告された。
総括
原油価格の乱高下と地域紛争を巡る外交主導が同時進行することで、BRICSは資源収益の急変と貿易・金融の波及を受けやすくなっている。各国の政策対応は成長維持と社会的安定を同時に追求する難題に直面しており、政策の非整合が域内外のマクロ不均衡を増幅する危険性がある。