世界成長見通しの下方修正とBRICS内の二極化――ブラジルの好調とロシアの実体縮小、対外戦略の再編が浮き彫りに
国際金融機関が世界成長見通しを引き下げる一方で、ブラジルの国内見通しは引き上げられ、BRICS諸国の景況感に明確な違いが生じている。ブラジルやインドでは内需と投資が勢いを見せ、株式や貿易の回復が確認される半面、ロシアは実体経済の縮小を示し、南アフリカは国内政策と治安・行政の課題を抱える。これらの差異が世界の資源需給や資金の流れに影響を与えている。
BRICS各国はそれぞれ異なる手段で成長と安定を図っている。中国は対外投資と貿易の拡大、ロシアは国家戦略企業の再建と外交調整、インドは港湾や再生可能エネルギーを軸にしたインフラ強化に注力しており、各国の政策動向がグローバル経済の不均衡を拡大するリスクを高めている。
ブラジル
ブラジルは内需の強さと資本市場の勢いが同時に示された。国際金融機関がブラジルのGDP見通しを引き上げる一方で世界成長見通しを下方修正した。株式市場ではボベスパ指数が今年18回目の史上最高値を記録し、20万ポイントに接近した。小売売上高は0.6%上昇して過去最高を更新し、外国人観光客数も最新集計で歴史的なピークに達した。年次での年金基金の収益は2025年に13.2%を記録した。政府は燃料と液化石油ガスの価格上限措置を打ち出し、労働面ではルーラ大統領が6×1勤務の廃止法案を議会に提出し、新開発担当相が週40時間労働を支持した。
ロシア
ロシアは実体経済の縮小と対外収支の圧迫が進む一方で、国家主導の成長刺激策を優先している。公式統計で1~2月期のGDPは1.8%縮小し、経常収支の黒字は約19億ドルに縮小した。財政当局とクレムリンは成長を優先し、2025年に石油・ガス・輸送分野の戦略企業32社の再建を進める計画を掲げた。外交面ではラブロフ外相が北京で高級会合を主導し、中国との結びつきが強化され、プーチン大統領の国賓訪問準備も進展した。軍事面ではウクライナでの前進が供給線を断つ局面を作り出したと報告され、対外取引では米財務省がルクオイルの海外資産との取引を認めるライセンス延長を行った。ロシアはイランの濃縮ウランをめぐる国際的懸念に対して建設的役割を果たす意向を示した。
インド
インドはインフラ投資と再生可能エネルギーで成長基盤を固めている。サガルマラ事業の一環で315件、総額約1.57兆ルピー相当の港湾・沿岸物流プロジェクトが完成した。原型高速増殖炉の一里塚となる節目を政府が報告し、太陽光発電では史上最高の設備導入を達成したと首相が述べた。外交面では首相がオーストリア首相と会談し、米大統領と電話で協力継続を確認した。安全保障改革ではG4提案を支持し、国連安全保障理事会の拒否権棚上げ(15年間)を支持するとともに、二層的な常任理事国案には反対を表明した。対外支援ではアフガニスタンへBCGワクチン13トンを供与し、金融市場ではセンセックスが約1,264ポイント上昇、Niftyも約1.6%上昇して政策シグナルに反応した。
中国
中国は対外展開と制度的基盤の整備を同時に進めることで国際プレゼンスを強化している。李強首相が有力企業にスペインでの投資拡大を促し、中国とベトナムの首脳が複数分野での協力拡大に向けた調印式に出席した。習近平国家主席はロシアとの戦略的整合を呼びかけ、グローバル・サウス内の結束強化を提唱した。規制面では銀行の対外貸出に対するレバレッジ比率を引き上げて越境リスク管理を強化し、中央と市場当局は3月の外国為替市場が安定していたと報告した。広州交易会(カントンフェア)は過去最大規模とされ、貿易の回復を示し、世界最大の純電動インテリジェントコンテナ船が就航して物流の脱炭素化を進めた。さらに当局は英語など外国語での国家規格2,613件を無料で公開し、相互運用性の向上を図った。
南アフリカ
南アフリカは地域投資と雇用創出を軸に政策課題と治安・行政の問題が併存している。シリル・ラマポーザ大統領は地域経済開発サミットで域内投資と雇用創出を強調した。民間企業ムリロ社は北ケープ州で再生可能エネルギー事業に約130億ランドを投資すると発表した。全国鉱山労働組合は7%の賃上げ案をめぐり組合員に協議を行い、クワズールー・ナタル州への拡大公共事業向け資金は国当局により一時凍結された。ガウテン州の人権委員会が水危機について調査を開始し、クワズールー・ナタル州の運輸当局は運転免許発給の腐敗対策を打ち出した。検察当局はジュリアス・マレマ被告に対し15年の刑を求刑し、高位の公判で中心的役割を果たしている。
総括
BRICS内では国内景気の局所的加速(ブラジル、インド、貿易回復する中国)と、ロシアの実体経済縮小や南アの統治・資金配分問題という二極化が進行している。この構図は資源価格と資本フローの局地的変動を強め、世界経済の回復を不均等にすることで輸出入経路や金融市場のボラティリティを高める結果を招く。